現場のための水理学 (web 版)

本コンテンツの成立ち(壇鉄也)

 このコンテンツは、北海道大学名誉教授 清水康行氏・室蘭工業大学教授 中津川誠氏が北海道開発局土木試験所(現在の「国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所」)に在籍しておられた 1987 年に同所の月報で連載された 「現場のための水理学」 を iRIC-UC の会員社である日本工営株式会社の壇鉄也が web 化したものである。

■ 原典について

 「現場のための水理学」 は寒地土木研究所 寒地水圏研究グループ 寒地河川チームのデジタルライブラリに PDF 形式で収録されている。連載各号のタイトルと著者(敬称略)は下表の通りである。各号の演習問題は当時の河川研究室メンバー他が解答を寄せている。

No.

タイトル

著者

411号

単断面における不等流計算

中津川 誠・清水 康行

412号

一般断面における不等流計算

中津川 誠・清水 康行

413号

掃流砂と河床変動

荒井 信行・清水 康行

414号

浮遊砂と河床変動

荒井 信行・清水 康行

415号

河床変動計算の応用

中津川 誠・清水 康行


■ web 版について

 「現場のための水理学」に匹敵する丁寧さで実践的に水理学を解説している図書は今もって例を見ない。同じ意見は同業の建設コンサルタントの多くから耳にする。この貴重な資料をより多くの河川技術者や学生に届けることが今回の web 化の目的である。
 web 化の過程では PDF のファイルを OSR でテキストファイルに変換して原典を出来るだけ忠実に再現した。ただし、演習問題の解答の部分については計算プログラムが Fortran あるいは Basic で記述されたものであるため、時流に即して Python で書き下ろすとともに、ダウンロード(ライセンスフリー)を可能にした。合わせて解答文も新たに記述した。したがって、この部分についての文責は壇にある。
 なお、本コンテンツの公開については清水教授・中津川教授に快諾頂き、原典の著作権者である寒地土木研究所のご了承を得た。また、本編の校閲は (株)ドーコンの向井直樹氏に、演習問題21・22は(株)開発工営社の濱木道大氏に担当して頂いた。


はじめに

中津川誠・清水康行

   我々河川技術者が,実用面で水理学を必要とする場合, どうも水理学のセオリーはややこしいとか, 専門書を見ても, 真に必要となるポイントをつかむことに苦労するとかに辟易して, 実際は根底にある考え方をあまり省みることなく, また検証することなく, 結果のみをうのみにしている例はままあるのではないかと思います。
   しかしながら,やはりでてきた結果について, その根拠や経緯を知り,また, 自らも手を下して縦横無尽に解を導きだせれば, 技術者としての向上や視野の拡大に通ずるところもあるのではないかと思います。
   また,最近になって,2 次元の数値計算により, 河川の流れや河床変動が良好に再現できるようなモデルが開発されてきております。 このようなモデルも,水理学の基礎的な知見を営々と積重ねたものに過ぎません。 したがって,本稿で解説する基礎知識を着実にマスターしていくことが, 一見難解にみえるセオリーを理解していくことにもなるのです。
   以上のようなことを踏まえ,もっぱら実用性が高く, かつ技術者の啓蒙に資する意味から ”真に必要となる内容を抽出し, かつなるべくやさしく” 解説し, 流れや河床変動といった水理学の実際を習得していこうというのが本稿の目的であります。 特に,実践面での充実を目指すため, 多数の演習問題を掲載しておきました。 これらについては解説や解答を一読するだけでなく, 是非とも自らが手を動かし,計算機を駆使して取組むことが, なによりも理解への早道と思われます。
   なお,この現場のための水理学は今回を含め, 今後,以下の内容をシリーズで掲載していきたいと思います。