この節の作者: Yasuyuki Shimizu <yasu@i-ric.org>
はじめに¶
本テキストの当初の目標¶
2021年夏, コロナ蔓延で巣ごもりの中,
漠然と「いままでやってきたことをまとめておくかな~」とか考え始めていました.
そんな中,iRICプロジェクト の盟友, 旭一岳君 から「これからコードはPythonで書かないとダメですよ」と言われたのがどうも気になって,「河川流れの計算コードをPythonで書いてみようかな?」と思ったのがきっかけです.ついでに,
どうせなら「基礎式や差分式も含めて解説書形式の文書に残そう」と思い,これを断片的に書いているうちに,
「そうだ! あの昭和の名作, 現場のための水理学 の令和版を作ろう!」と一念発起したのであります.
一里塚として,Figure 1 のような開水路における非定常2次元モデル(この例は障害物を含む自由水面流れの計算)をPythonコードで書くためのノウハウをまとめることにしました.すなわち, iRICのNays2DH や Nays2DFlood で用いられている理論やテクニック,ノウハウを丸裸にしてしまおうという訳です. 本にして出版しようとかE-Bookにしよう, とか考えましたが, 有料出版は気が進まなかったので, 全部無料のWebsiteにして公開することにしました. これですと気が向いた時に順次修正・更新・追加なども出来るし,間違いを指摘された時も直ぐ修正能です. なお,Nays2DHやNays2dFloodでは実河川の河岸や堤防に沿った境界条件を取りやすくするために,境界適合座標もしくは一般座標系を採用してますが,まずこの一里塚の段階では初心者にも分かりやすいように,オーソドックスな直交 \((x,y)\) 座標系を用いて解説することにしました.
本テキストの2番目の目標¶
2次元流れの計算モデルの解説や実例まで目途がついた段階で,さらなる欲望が湧いてきました.それは, 「次は河床変動だ!」ということです.ただし, 一言で河床変動と言っても話のスケールは河床材料の粒子規模の砂漣からアマゾン川の数10kmの大蛇行までとても広範囲で,関連する話題も,抵抗,流砂,河床形態から,差分計算法なでいろいろあるので考えて見ると無謀な話で, 何から手を付けて良いか分からないような感じです. そうは言っても「何か」が私の背中を押すので,とりあえず,2番目の目標として河床変動計算を行うたもの最小限の基礎知識を纏めることと,それを用いて実務で用いられる1次元, 2次元 の河床変動計算に至るまで,とにかく「自分でプログラムを書く」ための知識の伝授ということを目標に解説をすることにしました.
すなわち, 2番目の目標は Figure 2 にあるような 2次元河床変動計算(この例は蛇行水路における流れと砂州形成)のためのコードを書くためのノウハウおよび,このような河床変動現象のバックグラウンドに流れている先人たちの土砂水理学の研究成果を知ってもらおうということです. 私が生きてるうちにどこまで行けるかは分かりませんが,行ける所までは行こうと思ってます. 興味のある方はお付き合いください. そして,いつの日か読者の中から,次世代のiRIC開発者の仲間が現れることを期待します.
テキストの河床変動編の 移動床河川水理学の基礎知識 は当初は予定してなかったのですが, 河床変動計算のごく基礎的な部分だけは必要かな?と思って書いているうちに,膨らんで結構なボリュームになってしまいました. 私自身が撮影した砂州上空からの映像も掲載しておりますので,この部分だけでも楽しめると思います. なお,既に「流れの計算は卒業した」と言う方や,「別にコードは書けなくてもいいから移動床水理の勉強をしたい」と言う方は 移動床河川水理学の基礎知識 から始めるというのも全然OKです.
注釈
本テキストや公開コードは完璧ではありません.間違いや改良点あれば教えて下さい. 特にPythonコードについては素人なので,もっと賢い書き方があると思います. いろいろなご意見を歓迎します. また,読んでも分からん.講義をして欲しと言う方,個人,職場,サークル単位で講義します.オンラインでも,出前講義でもOKです.【本テキストの講習会】+【iRIC講習会】という形式も可能です. 興味のある方は是非ご一報ください. 連絡は yasu@i-ric.org までお願いします.
謝辞¶
注釈
本テキスト中のPythonコードのプログラミング方法や実行環境の構築,図や動画の表示方法, GitHub での公開方法については (株)River Link の旭一岳社長から多くのご指導を頂きました.ここに記して謝意を表します.
執筆開始 2021年6月28日 清水康行